英国各地に無数に存在する古墳のうち、大きな物は長形羨道古墳(約30m~60mほど)であり、その大きな規模から、いまだに内部の石組み構造はそのままに周囲の土盛りが残存し、壕までが識別さえできるものがある。
例えば、イングランドではウエストケネット長形羨道古墳(WestKennetLong Barrow)であり、アイルランドでは復元された世界遺産ニューグレンジである。一方、小さい古墳は、俗に丸塚(round barrow)と呼ばれ、特別に保存状態の良好な地方では、お椀を伏せたようなこんもりとした土盛りのまま残存しているものもある。他方、気象が激しく風の強いコーンウォールやデヴォンなどの南西部では、土が消失して内部の石組みだけになったドルメンが多く散見される。アイルランドの一地方では、もともと土盛りさえなかった古墳もあるが・・・。
土盛りのある古墳は、冒険小説『ホビット』にあるように、妖精や小人の棲家と考えられ、小山(土盛り)に こっそり穴を掘って内部を快適な住居としていると考えられてきた。人間の見ていない夜中に外に出て、コビト達が踊りを踊るというような俗信がある。ここで取り扱う古墳は、主として、土盛りが失われ、破壊された古墳に注目する。その代表例として、「ウェイランド鍛冶屋」の長形羨道古墳(現在では復元されて土盛りが戻っている)を取り上げる。特に、珍しい呼名については丹念に追求したい。
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第2章 目次
21.ウェイランド鍛冶屋 (Wayland’s Smithy)
① 鍛冶屋の伝説
② 北欧伝説:鍛治ヴェールンド
③ フランクの小箱
④ 古典神話との関連
⑤ 蹄鉄伝説の由来
22.アーサーズ・ストーン (Arthur’s Stone)
23.巨人の犬小屋 (Poet’s Stone)
24.リラトン丸塚 (Rillaton Barrow)
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