底なしの時の深い淵から 突然襲いかかる恐怖、
胸も潰れんばかりに 打ちひしがれたのは、
見捨てられた気の毒な家族を眼の当りにした時。
語れよ、重厚なる母よ、時の威圧をはね除けて。
ウィリアム・ワーズワース 1833年作 (Poem Xliii., composed 1833 William Wordsworth)
それでは、お話させていただきます。ある安息日のこと、魔女の私と娘達が魔女集会をしておりましたら、悪魔のマイケル・スコットがやって来たのです。何やら気に入らないことでもあったようで、突然魔法をかけて、私達母娘を石にしてしまいました。この呪いを解くには、人間が、石の数を正確に2度数えなくてはなりません。さすれば、元の姿に戻れるのです。ついでにお願いがあります。私メグの身体を傷つけないでくださいませ。切れば、血が流れます。また、サークルの石を破壊したり不敬を働いたりしますと、不吉なことが起こりますよ。現に18世紀末に、レイシー大佐が、娘の一人である大石を破壊しようとしたら、突然、前代未聞の大嵐が起き、部下ともども吹きすさぶ雷雨の中を命からがら逃げ出したことがありましたから。
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所在地: カンブリア(湖水地方)、ペンリス(Penrith)の北東8.8km、リトルサルクト村(Little Salked) の
北東約1km。エデン川の東側。
建造年代: 青銅器時代初期 (紀元前1500年~1000年頃)
構造など: 単独の立石(メグ)--- 高さ3.8mのメンヒル。エデン渓谷から切り出された赤色砂岩。
環状立石(サークル)から南西15mに設置。(傾斜地の上方向)
上部にかけて細く削られており、南東面に螺旋状の文様。
サークル(娘達)--- 歪な円。直径109m~93m。巨石は斑状花崗岩。現存68個(元は70個か?)。
附記: 15世紀後半、キリスト教異端への迫害が強くなり始めた頃、魔女狩りが各地で行われた時代に出来た伝説。ロールライトストーンズの例のように、通常魔女は魔法をかけて人間を石化する立場なのだが、ここでは逆に魔法をかけられるという逆転した立場なのは珍しい例。
ロングメグ(Long Meg)の名の由来について。近くのお屋敷の夫人で魔女と名指しされた”Meg of Meldon” (本名Margaret
Selby)だろうとの俗説は、専門家に否定された。
むしろロングメグは中世(14~16世紀)に、人間も含めて細長い物に付けられたあだ名だとの解釈が受け入れられている。例えば、軍の大砲を ”Long
Meg of Westminster” と称した事例がある。
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<参考資料>
"Great Stone Circles: Fables Fictions Facts", A. Burl, Yale University
Press (1999), New Haven and London.
“Archaeological Services, Durham University”, (https://altogetherarcaeology.org/),
Retrieved April13, 2020.