下:ハーラーズの中央輪
その昔いつの頃かは定かではありませんが、ここコーンウォール地方では、ハーリングと呼ばれるラグビーのようなゲームが盛んに行われておりました。作物の豊穣、草木の復活、動物の繁殖や人間の繁栄を祈る古の儀式が起源かもしれません。主に春から夏にかけて開催され、時には結婚式の祝宴の一部として村を挙げて執り行われていたそうです。本当にハーリングが好きだったのですね。ことさら村対抗の試合ともなると、村の名誉がかかっていましたので、皆必死でした。足の早い若者、遠投の上手な者、スクラムの強い男、素早くボールを捕獲できるプレイヤーを一人でも多く掻き集める必要がありました。
さて、本来日曜日は神様のための安息日で娯楽は御法度でしたので、ゲームは慎むはずでした。ところが血の気の多い若者達は安息日などお構いなし。年寄りのお説教はまるで耳に入りませんでした。特に前回負けたチームはやる気満々で、殺気立ってさえいました。準備運動を念入りに済ませ、総勢67名の「選手」が野球のボールくらいの銀の球を奪い合い、投げ合い、走り合いながらゴールを目指します。
1時間ほどの激しい競り合いの後、前回の雪辱を果たしたいとの必死の努力のお陰でゴール寸前となったその瞬間、突然の黒雲と雷鳴がハーラーたちを襲いました。あっという間に全員がその場に立ち尽くし動けなくなりました。一人残らず、石になってしまったのです。ミニヨン・ムーアの3つの石の輪はハーリングのゲームを永遠につづけるハーラー達の哀れな姿なのです。
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<伝説参考資料>
History of The Hurlers Stone Circles, (Retrieved April 3, 2020),
https://www.english-heritage.org.uk/visit/places/hurlers-stone-circles/history/
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所在地: コーンウォール地方 ボドミン・ムーアの南東端。ミニヨン村近く。
長塚、他のサークル、アヴェニューなどの先史時代の遺跡豊富な環境にあるが、鉱山や採石事業の
活発な時代に、相当荒らされた形跡あり。現在、環境保護の努力で保存管理がなされている。
(管理団体:English Heritage & Cornwall Heritage Trust)
建造年代: 青銅器時代 (紀元前2500 ~ 1800年頃)
構造: 3つのサークルが連続しているのは珍しい。3つの基軸は正確に一直線にはならないが、概ね
北北東=南南西を指す。北円(直径35m、元の立石30基)、中央円(直径42mのやや歪な円、
元の立石28基)、南円(直径33m、立石は9基存在しているが、元は28~29基か)。
特に中央円は重要であったらしく、丁寧さが覗える。石の表面がスムーズに仕上げられていること、
他よりも大きな石であること、太め(女)と細め(男)が交互に配されていること。
また、地面が北(丘)に向って傾斜がやや上っているので、北に低めの石を、南に高めの石があり、
全体で水平を保つ努力が覗える。
輪の中央付近に、石英の砕状のものが発掘されたので祭祀時の参道があったか。
中央円の西南西120mには2基の立石があり、The Pipers「笛吹き」(高さ2m、間隔 2m)と呼ばれて
いる。 ハーラーズへの門柱の役割だったらしい。
附記: ハーラーズの基軸の先の尾根にはリラトン丸塚古墳(Rellaton Barrow)*があり、サークルと密接な関係があったと考えられる。丸塚の西方向にはストウズ丘(Stowes Hill)のチーズリング奇岩(Cheesewring)*が環境を支配するかのようにいやでも視界に入る。
いずれも奇妙な伝説がある。
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<参考資料>
“The Hurlers stone circles”, (https://www.cornwall.gov.uk/), Retrieved
April 1, 2020.
“The Hurlers (stone circles)”, (https://en.wikpedia.org/wiki/), Retrieved
April 1, 2020.