ボドミン・ムーアのストウズ丘の尾根付近には、位の高いドルイドの老僧が住んでおりました。チーズリング奇岩に腰掛けて猪狩りの狩人を待ち構えていて、自慢の金の器 (上記写真参照)で飲物を勧めてくれました。その金盃の不思議は、たとえ50人が飲んでも、決して飲み干すことができなかったことです。
そんなある日、いつもの様にハンターの一行がやって来ました。一人の高慢な狩人がこう豪語しました。「これっぽっちのワインなら、俺様が一人で簡単に飲み干してみせるヮ。」 老ドルイドが差し出す金盃を受け取ると、ゴクゴクと飲み始めました。精一杯いくら飲んでもワインは減りません。そのうちに男はイライラし出し、ついにかんしゃくを起して、盃の中身をドルイド僧の顔目がけて浴びせかけました。するとたちまちドルイドはパッとその場から消えてしまいました。ビックリした男は金盃を持ったまま、馬に跨がると全速力で逃げ出しました。ところが途中で、馬がバランスを崩したため、乗手ともども峡谷に落ちてしまったのです。その男は、首を折って命を落とすに至りましたが、手にはしっかりと金盃を握ったまま埋葬されたということです。
(註: この話は、1837年に金コップが発見された約60年後にコーンウォールの地誌に発表されたとあるので、後発の疑似伝説の可能性あり。。飲物が飲み干せない魔法の器の話は他にもあるので、借用されたと考えられる。)
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所在地: コーンウォール地方ボドミン・ムーアの南東端に近く、ストウズ丘の東尾根。
ハーラーズ(ストーン・サークル)から北北東に450mの高所。
建造年代: 青銅器時代初期(紀元前2000~1500年頃)。下記出土品からの推定。
学術的発掘は未施行。ボドミン・ムーアの古墳のうち、最大規模の円形羨道墳。
古墳のサイズ: 直径34m、高さ2.7mの丸塚。
東側中腹に入口。その奥の土中に南北方向に埋葬室(2.2mx1.1m、高さ0.9m)がある。
附記: 1837年人骨と共に、金のコップや長剣、ビーズ装飾品、ガラスのコップ、その他の副葬品が発見されたとの記録がある。特に金のコップはRillaton
Gold Cupと呼ばれ、高さ8.2cm、マグカップの様に広口で取手が一つある。金属の強度をつけるために、全面がギザギザの波うった表面になっている。
現在重要文化財として大英博物館に収蔵。
他の発掘品は散逸し所在不明。金コップと剣は発見後、ウィリアム4世に献上されて英王室の所有となった。1936年その重要性が判明し、ジョージ5世の手元にあったものが、没後、大英博物館に貸与された。
丸塚の頂中央には10mx15m、深さ1.75mの大きな穴が見られるが、これは盗掘によるもの。埋葬品が盗まれず無事だったのは、埋葬室が東に偏っていたためか。
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<参考資料>
“Rillaton Barrow”, (https://www.cornwall.gov.uk/environment-and-planning/stratetic-historic-environment-service/),
Retrieved April 5, 2020.
“The Rillaton Barrow, 500m NNE of The Hurlers stone circles”, (https://historicengland.org.uk/listing/the-list/list-entry/1010233),
Retrieved April 5,2020.
“The Modern Antiquarian: Rillaton Barrow”, posted by Rhianno, 2006 &
2011,
(https://www.themodernantiquariancom/site/2009/rillaton_barrow.html),
Retrieved April 4, 2020.