オークニー遺跡群(湖に挟まれた世界遺産登録地 ○印) ブロドガー・リング (www.visitscotland より)
このオークニー諸島は9世紀の頃からヴァイキングの影響が人的にも文化的にも大きく、島の習俗にもキリスト教以前のゲルマンの名残がありました。18~19世紀の古い書き物によりますと、若い恋人達のお正月の行事として、ブロドガーリング、ステネスストーンズ、、オーディーン石の3ヶ所の巨石遺構に「お参り」をする風習がありました。御利益が大ありだったそうです。
カップルは十分な装備と食料を持って出発し、先ずは「月の神殿」ステネス・ストーンに出かけます。ここで女性はひざまずいてオーディーン(註:本来はゲルマンの主神)に約束や義務の誓いをたて、願いを叶えてもらえるよう熱心に祈ります。その儀式が終わると、次に2人は「太陽の神殿」ブロドガー・リングに向います。ここでは男性が代わってひざまずいて、オーディーンに誓いをたて、願いを叶えてもらえるよう祈ります。最後の行程は、オーディーン石です。この巨石には、自然にできた穴が開いていました。恋人達はここでも誓いをたて、子宝に恵まれますようにと祈り、石の両側から穴を通して手を繋ぎます。これで儀式は完了です。彼等の願いが叶ったかは、神のみぞ知る・・・。
(註: ブロドガー・リングは、踊る巨人達が悪魔によって石化されたとの伝説がある。オークニー各地には
巨人伝説が多い。)
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ブロドガー・リング (Ring of Brodgar)
所在地: オークニー本島、ブロドガー岬(ステネス湖とハレー湖に挟まれた細長い地)
ユネスコ世界遺産に広域的に文化遺産登録(1999年)
建造年代: 新石器時代後期 (紀元前2500年~2000年頃)
構造: サイズ: 土塁直径約104m(英国全土で3番目の大きさ)
2ヶ所の出入り口あり。
巨石: 元約60個。現存27個。高さ2.1m~4.7m。板状の地場材の砂岩。
壕: 土塁の外側には、岩盤を削って掘った壕が巡らされている。
壕は幅9m、深さ3m、周囲380m。
堤に当たるものはないので定義としては変則だが、便宜上「ヘンジ」と呼ばれる。
ステネス・ストーンズ (Stones of Stenness)
所在地: ブロドガー・リングより南東に1.6km。ユネスコ世界遺産の一部。
建造年代: 新石器時代後期でブロトガーより古く、規模は小さい。(紀元前3100年頃)
構造: サイズ: 土塁直径44m。出入り口は北に1ヶ所のみで、新石器時代の居住地を向いている。
巨石: 元12個。現存4個。高さ約6m。細く薄い板状の砂岩。
発掘報告では、巨石は10本だけ建立完了したが、残り2本は未完成だった可能性。
壕: 土塁の外側には、岩盤を削って掘った壕が巡らされている。幅4m、深さ2.3m。
堤に関しては諸説あるが、もともと無かったとの説が強い。
オーディーン・ストーン (Odin Stone) ----- 農民により破壊され消滅。
所在地: ステネス・ストーンの北140mの所。
巨石情報: 紀元前3000年頃に立てられた単石。高さ2.5m、幅1m。2本の立石の1つらしい。
1814年、借地農民が、オーディーン石を訪れる人々により土地が荒らされるのに業を煮やして破壊。
19世 紀初頭に素人が描いたスケッチは、周囲のディテイルが不正確で、信頼性を欠くとの評。
穴が異常に大きく描かれているが、実際は小さかったようだ。
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<参考資料>
Westwood, J. and Kingshill, S. (2009), The Lore of Scotland: A Guide to
Scottish Legends,Random House Books, Lodon.
Sykes, H. (1993), Mysterious Britain, Weindenfeld and Nicolson, Ltd., London.
“ORKNEYJAR: The heritage of the Orkney Islands”, (orkneyjar.com/history/standingstones/stenness/stennesscentre.htm),
Retrieved April 12, 2020.