昔スコットランドで飢饉があった折、ここルイス島でも絶不作で食べ物が無く
なってしまいました。最後の粥も無くなり、追い詰められて人生に絶望した村の
女性が自殺を決意しました。ロッホ・ログ(Loch Roag)に入水しようとしたた
ところ、どこからともなく白い海牛(セイウチ?)が現れて、命を救ってくれま
した。
その海牛が言うには、「日が暮れたら、ロッホの見える丘のストーンサークル
に小桶を持って行きなさい。そこには一頭の雌牛がいて、桶いっぱいに乳を搾ら
せてくれるでしょう。毎晩、村人と誘い合わせて来なさい。」
その言葉どおり不思議な雌牛から、村人は毎晩桶いっぱいに牛乳を満たしてもら
い、命を繋ぐことができました。
ある晩、魔女が現れ、桶の代わりにフルイ(篩)を持って来て、牛の乳を搾りに
搾ったものですから、雌牛はそれきりふっつりと姿を見せなくなってしまいました。
(ミッチェルズ・フォルドのサークル参照)
その他の言い伝え
① 珍しいカラニッシュの立石群がどうして造られたのかお話しましょう。あるときキリスト教の高僧が指揮
をとって、アイルランドから多数の巨石を船で運んできました。労働をしたのは見知らぬ黒い人々で、僧侶
の指示に従って見事に組み立てたと伝えられています。
<註:類似構造のアヴェニューはアイルランドにもある。「黒い人」とは、髪の毛の黒いアイルランド人を
指すものと解釈できる。>
② 聖キーラン(St. Kieran) が島に布教に来た時に、キリスト教に改宗を拒んだ13人の巨人が聖人に石化され
て、ストーンサークルになった。 <13の数字がわざとらしい。>
③ 夏至の朝、一番鶏の鳴き声を合図に、アヴェニューを「光」が走る。
④ サークルには、豊穣の御利益があり、子宝に恵まれる。
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所在地: スコットランド、外ヘブリーデス諸島、ルイス島、カラニス村
建造年代: 新石器時代後期 (紀元前2900~2600年、2000~1700年)
構成: 石柱複合体で、各構成部分は異なる時期に順次造られたらしい。
石は片麻岩の地場材。薄い石版状の石が多い。地中で高温で変成された際や主成分の違いによる
模様が表面に見えるものがある。
(1)中央石柱とサークル: 石柱(高さ4.8m、幅1.5m、厚さ0.3m)は真の中心からやや西にずれている。
重さ約7トン。輪は楕円(13.4mx12m)で、石柱13本。
高さ平均3m。サークルのサイズは極めて小さい。
(2) アヴェニュー(北): 東西に並木のように2列の石柱。元は39本、現在19本残存。
長さ83.2m。幅6~6.7mでやや末広がり。中央に高い石。
(3)3本の石の筋: いずれもサークルから延びているが、計画性なし。
東筋は5本、長さ23.2m。南筋は5本、27.2m。
西筋は4本、13m。
(4)小羨道穴: 輪の東端の石柱から中央石柱までの間に、土中に埋めた石片で造成。
長さ6.4m。最後の構成部分。紀元前1000年頃まで数百年間使われたか。
附記: 紀元前1000年(青銅器後期)~500年頃に放棄されていた間に、厚い土や草に覆われた。
1857年に1.5m深さのピートを除去し、石柱の真の高さや羨道穴が発見・確認された。
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<参考資料>
"The Lore of Scotland: A Guide to Scottish Legends", J. Westwood
& P. Kingshill, Arrow Books (2011), London.
"A Guide to the Stone Circles of Britain, Ireland & Brittany",
A. Burl, Yale University Press (1995), New Haven & London.