41ジャイアンツ・コーズウェイ(Giant's Causeway)

北アイルランドの北部、ジャイアンツ・コーズウェイ海岸: 柱状節理による幾何学的な岩場が連なる。  

         地図<上赤丸:スコットランド、スタッファ島(フィンガルの洞窟)    下赤丸:北アイルランド、ジャイアンツ・コーズウェイとその海岸)>  

玄武岩(火山岩)のジャイアンツ・コーズウェイ(巨人の畔道)の伝説 

  昔々、アイルランドやスコットランドにも巨人が住んでいました。アイルランドのフィン・マックール
(Finn McCool) と スコットランドのベナンドナー (Benandonner) は両国の双璧で、いずれ雌雄を決する運命
ありました。その時のために、フィンは両国の岸の間に、延々と続く畔道として石を敷き詰めて造りました。
アイルランドとスコットランドを隔てるノース海峡を渡るのに足を濡らさずに済むから・・・と言うのが理由の
ようでした。

 そんなある日、フィンは宿敵のベナンドナーが、一騎打ちのため海の向こうからやって来ることを知りました。
遙か彼方にライバルの姿が見え出すと、フィンはその巨大なサイズにビックリ。すっかり弱気になったフィン
あたふたと家に駆け戻りました。そのだらしない姿を見て、賢い女房のウナは、一計を案じます。
 急いでフィンにベビー服もどきの長衣を着せ、揺り籠に見立てた大きなバスケットに寝かせます。その後ウナは
テキパキとした手つきで、厚手のパンケーキを焼きましたが、そのうちの一枚には、巧みに鉄製のケーキ型を
こっそり包み込みました。これで準備万端。
 そうこうするうちに予想通り、ドカドカとベナンドナーが家に乗り込んできました。
 「フィンと手合わせがしたい。ヤツはどこだ?」
 「あいにく、ちょっくら近くまで用足しに行っただよ。おっつけ戻るんで、お待ちくだしゃい。」
それを聞きつつ、ベナンドナーが傍らの揺り籠をチラリと見ると、その赤子のおおきいこと! 心の中で
ベナンドナーは、その父親の身体の大きさを想像し動揺しましたが、素知らぬ振りを装いました。
 「そうそう、丁度パンケーキが焼き上がったとこだでな。どーぞ召上がってくだしゃれ」
ウナはそう言って、あの鉄型入りのケーキを勧めました。
 ガブッ・・・と一口噛んだとたんに、ベナンドナーの前歯がカキンッと折れてしまいました。
 タイミングよろしく、ウナが普通に焼いたケーキを赤子を装ったフィンに与えました。美味しそうにパクパク
食べる赤子を見て、ベナンドナーはさらに恐怖心を増しました。その動揺を悟られまいと、あやすふりをして、
手を赤子の顔に近づけますと、小指をガブリッと喰いちぎられてしまいました。 「アイタッ!」

 これではとても父親のフィンとの戦いに勝ち目はないと観念して、ベナンドナーはあたふたと逃げ出しました。
すると、背後から、フィンが大声で 「おーい、スコットランドの巨人はどこだー!」と怒鳴りますと、
ベナンドナーはさらに慌てて敷石を蹴散らして、スコットランドへ逃げ帰ったそうです。

 念には念をとばかりに、フィン
追いかけて来られないように、
ベナンドナーは海上の敷石を
滅茶苦茶に破壊してしまいまし
たので、敷石は一つ残らず
すっかり海中に沈んでしまい、
今では、アイルランドの岸辺と、
スコットランドのスタッファ島の
海辺の洞窟にだけ、石柱として
残ることになりました。      

                     フィンガルの洞窟(スタッファ島)
                     (Source: en.wikipedia.org/)


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所在地:   北アイルランド、アントリム県の北部海岸線

地形の特徴:  約6,000万年前の火山活動により形成された玄武岩の溶岩台地。溶岩が冷えて固まる際に
       起こる柱状節理の現象が見られる。石柱が海岸線に広がって、美しい景観を呈している。
       1986年にユネスコの世界自然遺産に指定され、イギリスのナショナル・トラストが管理。

          因みに、柱状節理は日本でも散見される。 ①兵庫県豊岡市の玄武洞、 ②福井県
       三国町の東尋坊、③宮城県白石市の材木岩 などが有名。

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附記:  フィン・マックールとは、アイリッシュ・ケルト神話上の英雄。 3世紀頃の上王コーマックを
守る「フィアナ騎士団」の団長として伝承されている。アイルランド神話を構成する3つの物語群のうち、
フィン物語群に登場する。
  ところで、当ジャイアンツ・コーズウェイ伝説の出典は不明。この伝説は相当数の関連資料に紹介され
ているものの、話の詳細に関しては異説が多く、マイナーな民話や説話の特徴を示している。つまり、話が
広がるにつれて、尾ヒレが付いたり、都合の良い解釈を加えて語り継がれたものではないだろうか。
  さらに不可解なことは、アイルランド神話では、フィン・マックールは並はずれた英雄のはずが、この
伝説では女房にすがり助けを求める臆病でだらしない姿に描かれている。フィン物語群で華々しい豪傑ぶりを知る読者にとっては、甚だ信じられないエピソードだ。 ただし、海上にアイルランドとスコットランドを
結ぶ飛び石を建設したという話の下りだけは、英雄=巨人、地形造成=巨人の業績、との整合性が見られる。

  なお、メンデルスゾーンの名曲『ヘブリデーィーズ諸島(フィンガルの洞窟)』は、作曲家が1829年に
この地を訪れた後、その印象を演奏会用序曲として作曲したものと伝えられている。

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<参考資料> "Myths & Folkstories of Britain & Ireland", Kenneth McLeish, Longman Group UK Limited (1986),
         Essex, England
      "The Giant's Causeway", Phiip Watson, The National Trust Regional Office (2002), Co.Down, Northern Ireland
      "Fingal's Cave", (https://en.wikipedia.org/wiki/Fingal%27s_Cave), Retrieved November 7, 2020

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