31A スクーンの石

ウエストミンスター寺院所蔵の頃の戴冠椅子      傷ついたスクーンの石                 スクーン町の寺院跡地のレプリカ

patrickmufin.blogspot.com/             www.ancient-origins.net/               www.historicenvironment.scot/

 「スクーンの石」(the Stone of Scone) と呼ばれる枕状の石は、以前にロンドンのウエストミンスター
寺院の戴冠椅子の座板の下段に敷かれていたが、現在は、エジンバラ城に移され、丁重に陳列されている。
ここでは、数奇な伝説ゆえに人間に振り回され、傷つけられ、削られて変形した「スクーンの石」にまつわる運命的な流浪の歴史を追ってみたい。

現在の所在地:  スコットランド、エディンバラ城

サイズ:     横70cm、 奥行43cm、 厚さ26.5cm

重さ:      重さ152.8kg

岩石:      くすんだ赤紫がかった砂岩・・・スコットランド、パースシャー、スクーン界隈の山岳
         地帯のデボン紀(約4億年前)の地層から産出された
         19世紀以降に行われた科学的検証に依る。


附記: スクーンの石をつぶさに研究したW. ロッドウェル氏 (Warwick Rodwell) によると、昔の正確な記録は存在しないようだが、スコットランドに在った頃(1296年以前)のサイズは、現在の倍ほどもあったかと想像される。
 上面には、不連続の切傷状の線で長方形(45cm x 25.5cm)に彫られた刻跡が見える。14世紀頃の古い
刻跡らしい。ロッドウェルによると、石の由来を書いた銘板を取り付ける目的だったかもしれないが、その
計画は中止されたようだ。
  側面には、運搬や防犯の便宜のために、左右それぞれに鉄具(輪、鎖、留金、金具)が取り付けられている。
 さらに、醜いことに、鉄具の近くの側面にも上面にも窪みが彫られているのだ。戴冠椅子下の狭い空間に
ピタリと収納する必要があったから、出っ張った左右の鉄具が、椅子の枠にぶつからないように、鉄具を折り曲げて石の面と水平に納めるようにしたためだ。

 「スクーンの石」(the Stone of Scone) は、「運命の石」、「リア・ファイール」(the Lia-fáil ゲール語で運命の石の意味)、「戴冠石」(the Coronation Stone) などの異名を持つ。諸資料によると、それら呼称には、時代背景や地理的背景において、示唆するものに微妙な違いが見える。それらを混同した結果生まれた
伝説や噂も多い。共通項としては、ブリテン島やアイルランド島を支配する国王の即位式(冠を授けるとは限らないので、戴冠式とは言わないことにする)にて、国の正当な元首の地位を是認する際に用いられた重要な石であるということ。石器時代の生き残りのような石に、どんな重大な意味があるのだろうか?

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<参考資料> 「スクーンの石」サイトに共通の参考文献
"The Coronation Chair and Stone of Scone: History, Archaeology and Conservation", Warwick Rodwell, Oxbow Books (2013), Oxford.

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