14 スウィンサイド

「沈んだ教会」の伝説

スウィンサイドにはサンクンカーク(Sunkenkirk、「沈んだ教会」)という別称があります。ご推察どおり、教会が地中に沈んで埋められたことを示唆しています。その経緯はこうです。昔、新しい教会を建てるため、石工が忙しく働いていた時のことです。ところが、夜な夜な悪魔がやって来て、昼間、石工がせっせと積み上げた石組みを壊してしまったのです。 こんなことが何日も続きますと、ついに、根負けした石工たちは仕事を諦めてしまいました。勝ち誇った悪魔は、教会の柱だけを残して、土台から建物毎すっかり地中に埋めてしまいました。今見えている巨石は、全部、頭柱の部分なのです。

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<余録> ウィリアム・ワーズワースはダッドン川を謳った詩作品ソネットの中で、スウィンサイドに言及している。荒涼たる静寂に包まれさ迷う中で目にした大ガラスは、神々しい気配さえ漂わせ、悠久たる自然の支配者の使者のように界隈を飛翔する様を詠んだ。

大ガラスは飛翔する、ドルイドの輪の近くを。
自重で地中にしかと沈みゆく輪は、
その柔肌から生まれた寡黙なる母なる大地に帰ってゆく。

Or, near that mystic Round of Druid frame
Tardily sinking by its proper weight
Deep into patient Earth, from whose smooth breast it came!
     (The River Duddon, Sonnet XVII, Return, 1820 William Wordsworth)

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所在地:  カンブリア南部、ブラッククーム山(標高600m)の一部。スウィンサイド丘の麓。
      湖水地方の南西、丘陵に囲まれた閑静で平坦な草原(標高204m)。
      スウィンサイド牧場の脇。

建造年代: 新石器時代後期~青銅器時代初期 (およそ紀元前2500年~1000年頃)

構造    サイズ: 直径28.6mのほぼ正確な円形。
      巨石数: 元約60個。現存55個(32個が立ち、23個が倒れている。) 
          高さ2.3m以下。重さ約5トン。 巨石の間隔1.5m。 
      南西に入口。

岩石:   最寄りの丘から搬送した地場材、斑状粘板岩(porpyritic slate)。


附記: Swinsideの名の由来は、Swineherd「豚の群れ」が訛ったものとの説がある。夏場の豚の放牧地だった。
なお、巨石が沈んだ類似の伝説は、スコットランド、アバディーンの Chapel o’Sink にもある。

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<参考資料>
"Great Stone Circles: Fables Fictions Facts", A. Burl, Yale University Press (1999), New Haven and London.
“Swinside Stone Circle”, (megalithix.wordpress.com/2011/10/04/swinside), Retrieved 29 March 2020.
“River Duddon”, (https://en.sikipedia.org/wiki/River_Duddon), Retrieved 30 March 2020.

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