37悪魔の石矢

          北の石柱(左奥)と中央の石柱(右)          南の石柱 www.stone-circles.org.uk/

 

 ここヨークの北方に位置するバラブリッジ村外れには、麦畑の只中に、とてつもなくでっかく太い石の柱が2本、さらに林の中にも1本ニョキッと立っています。今ではのどかな村落ですが、昔こんな伝説が信じられていました。
 ここから北東25kmほど離れたハウ丘(Howe Hill) には、ニック爺(Old Nick)という名の短気な巨人悪魔が住んでおりました。キリスト教の何が気に入らなかったのか分かりませんが、ある時何かの拍子に怒り狂って、丘の上からこう叫びました。
 「バラブリッジよ、そこをどけ。邪魔するでないぞ。アルドボロウ村をペシャンコにしてくれるわ。」 

 たちまちアルドボロウ村目がけて強力な石製の矢を投げ放ちました。1本ならずも3本もです。ところが、目標のアルドボロウ村には1本たりとも届かず、その手前のバラブリッジ村の村外れに散り散りに突き刺さってしまいました。こちらとしてはとんだ迷惑ですが、幸いにして怪我人はいなかったそうです。いつもながら、不器用な巨人のやることは大雑把ですねー。

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所在地:    ノースヨークシャー、バラブリッジ 村(Boroughbridge)

建造年代:   新石器時代後期~青銅器時代初期 (およそ紀元前2500年~1000年頃)

構造:     現存する3本の石柱は重さ40トン以上、ほぼ南北(NNW-SSE)に配置されている。
        元は4~5本との説。4本目は恐らく南柱と中央柱の中間か。16世紀に宝探しの折に破壊。
        全て上部が多少先細りで、風化により、縦に筋状の溝の浸食が見られる

岩石:     磨石硬砂岩(millstone grit) で15km南の石切場から採取し運搬された。

サイズ     南の石柱:  高さ7m、  太さ1.4mx1.2m。地中の深さ1.8m。
        中央の石柱: 高さ6.7m、 太さ1.5m x 1.2m。地中の深さ1.8m。
        北の石柱:  高さ5.5m、 太さ2.6m x 1.4m。地中の深さ1.4m。

全長:     全長170m。(南と中央 110m、中央と北 60m)


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附記: ノースヨークシャーのウル川とスワイル川に挟まれ
南の地域は、新石器時代の遺跡が集中しているため、
「聖なる谷」と称されている。(ブルーに塗られた地域)
これら数ヶ所のヘンジを結んだ2本の基軸(地図上の細い
黄色い線)を延長すると、「悪魔の石矢」で集合するとの
学説がある。
星座に倣ったものかもしれない。
特に中央部のソーンボロ・ヘンジ(Thornborough Henges)
には、3つの大規模なヘンジや墳墓、カーサスなどの遺構があり、「北のストーンヘンジ」の異名を持つ。

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<参考資料>
“Devil’s Arrows: Bronze Age Standing Stones”, (https://www.stone-circles.org.uk/stone/devilsarrows.htm), Retrieved April 17, 2020.
“Devil’s Arrows”, (https://en.wikipedia.org/wiki/Devil%27s_Arrows), Retrieved April 17, 2020.
“The Sacred Vale”, (www.thesalamanderstone.com/page18.htm),Retrieved April 17, 2020. (上記地図 “The Sacred Vale” の出典元)


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